これからの住宅ローンはどうなる?2026年9月
金利上昇時代に不動産購入を考える
不動産業界に長く携わっていると、ここ数年の不動産価格や住宅ローンを取り巻く環境の変化には驚かされます。
特に2026年に入り、私自身が強く感じているのが、**「これからは金利のある世界が当たり前になるのではないか」**ということです。
私はいわゆる団塊ジュニア世代です。
バブル時代の不動産価格や金利上昇を、社会人として経験した世代ではありません。
そのため、現在の金利上昇についても、過去の経験から「このくらいなら大丈夫」と簡単に判断できるものではありません。
同業者と話をしていても、今後の金利や不動産市場については、楽観的な意見よりも「今後どうなるのだろう」という不安の声を聞くことが増えました。
今回は、今後の金利上昇が不動産市場、特に住宅購入者にどのような影響を与える可能性があるのか、私なりに考えてみたいと思います。
6,000万円を借りた場合、金利が変わると返済額はどうなる?
金利上昇の影響を分かりやすくするため、6,000万円を35年間借りた場合で比較してみます。
金利1.5%の場合
借入額:6,000万円
期間:35年
金利:1.5%
月々の返済:約183,710円
35年間の総返済額:約7,715万円
金利3.5%の場合
借入額:6,000万円
期間:35年
金利:3.5%
月々の返済:約247,974円
35年間の総返済額:約1億415万円
つまり、
月々の返済額は約64,264円増加します。
年間では約77万円です。
35年間の総返済額では、
約2,699万円の差
になります。
これは非常に大きな差です。
もちろん、実際の住宅ローンには金利優遇、団信、借入時期、金融機関ごとの条件などがあるため、すべての方がこの数字になるわけではありません。
しかし、金利が1%台と3%台では、同じ6,000万円を借りても、返済負担が大きく変わることは理解しておく必要があります。
なお、2022年のフラット35の21~35年の最頻金利は1.5%、
2026年9月現在、フラット35の21~35年の最頻金利は3.46%となっています。
住宅ローンは「金利」よりも「毎月の支払い」で考える
住宅を購入するとき、
「金利が0.8%だから大丈夫」
「1%を切っているから安い」
と考える方も多いと思います。
しかし、本当に重要なのは、
「その金利で毎月いくら支払うのか」
です。
例えば、6,000万円を借りた場合、
月18万円台なのか、
月24万円台なのか。
月々約6万4,000円違えば、年間では約77万円になります。
住宅ローン以外にも、
固定資産税
管理費・修繕積立金
火災保険
駐車場代
車のローン
教育費
光熱費
食料品などの生活費
があります。
金利だけを見て住宅購入の予算を決めるのではなく、金利が上昇した場合にも支払えるのかを考えておくことが重要だと思います。
コロナ禍の不動産市場を振り返る
コロナウイルスが蔓延した時期には、不動産市場でも一時的に高額物件(私のイメージでは5,000万円以上)の流通が鈍くなった時期がありました。
もちろん今回の金利上昇とコロナショックは性質がまったく違います。
コロナ禍では、
「この先どうなるのか分からない」
という経済・生活そのものへの不安がありました。
今回の金利上昇は、それとは違い、住宅ローンの返済負担を直接的に増やす可能性があります。
そのため、私は今回については、
コロナショックと同じような市場になるとは考えていません。
ただし、購入者の心理に影響を与えるという意味では、今後注視していく必要があると思っています。
特に注意したいのは「変動金利」で購入した方

現在、住宅ローンでは変動金利を利用する方が多くいます。
変動金利には、金利が低い時には大きなメリットがあります。
一方で、今後金利が上昇すれば返済額への影響が出てくる可能性があります。
ここで注意していただきたいのが、
「5年ルール」「125%ルールがあるから大丈夫」
と単純に考えないことです。
5年ルールや125%ルールは、すべての金融機関・住宅ローンに共通するものではありません。日本銀行も、一部の金融機関ではこれらの激変緩和措置を導入していないと説明しています。
利用している住宅ローンに、どのようなルールがあるのかを確認することが大切です。
125%ルールがあっても「金利上昇分が消える」わけではない
例えば、現在の返済額が、
月183,710円
だったとします。
125%までしか返済額が上がらない場合、
183,710円 × 125% = 229,638円
程度になります。
一方、仮に金利が3.5%まで上昇した場合、本来の返済額が約247,974円になるとします。
すると、
247,974円 − 229,638円 = 約18,336円
の差が生じます。
ここで重要なのは、
「18,336円が免除されたわけではない」
ということです。
金利上昇によって利息の支払いが増えれば、その分、元金の減り方が遅くなる可能性があります。
つまり、毎月の支払いを急激に増やさないための「激変緩和」であって、金利上昇による負担そのものがなくなる制度ではありません。
日本銀行も、125%ルールについて、返済額の増加を抑える一方で、元金返済が当初計画より減少した分は返済期間満了時までに完済する必要があると説明しています。
「35年ローンだから35年で終わる」とは限らない?
ここも非常に重要なところです。
金利上昇によって毎月の返済額を一定範囲に抑えた場合、元金の返済が予定より進まない可能性があります。
その結果、
「35年間払えば必ずすべて終わる」
とは限らないケースがあります。
ただし、これは125%ルールを採用している金融機関で、かつ金利上昇によって返済額の調整が発生した場合などの話です。
すべての住宅ローンに当てはまるわけではありません。
だからこそ、
「125%ルールがあるから大丈夫」
ではなく、
「自分が借りている住宅ローンには、どのような仕組みがあるのか」
を確認することが大切です。
2022年に住宅を購入した方は、2027年が一つの節目になる?
例えば、2022年に変動金利で住宅を購入した方の場合、5年ルールを採用している住宅ローンであれば、2027年頃に返済額の見直し時期を迎える可能性があります。
ただし、これも金融機関やローン商品によって条件が異なります。
「2022年に買ったから2027年に必ず返済額が上がる」という意味ではありません。
大切なのは、
自分の住宅ローン契約を一度確認しておくこと
です。
借入時の金利だけを見るのではなく、
現在の適用金利
基準金利
金利優遇幅
5年ルールの有無
125%ルールの有無
金利見直しのタイミング
繰上返済の条件
借換えが可能か
などを確認しておくと安心です。
コロナ前に購入した人と、コロナ後に購入した人
私がもう一つ気になっているのが、購入した時期による違いです。
コロナ前から所有している物件については、立地などの条件が良ければ、その後の不動産価格上昇によって売却益が出る可能性があります。
もちろん、すべての物件が値上がりしているわけではありません。
しかし、土地価格や建築費、物価などが上昇したことで、購入時よりも現在の価格が高くなっている物件もあります。
一方で、コロナ後に購入した方の場合、
「すでに価格が上昇した状態で購入している」
というケースもあります。
この場合、今後金利が上昇し、さらに不動産価格が伸び悩むことになれば、購入時より高い価格で売却することが難しくなる可能性もあります。
だからといって、
「今すぐ売却した方がいい」
という話ではありません。
むしろ私が言いたいのは、
「余裕があるうちに、将来の選択肢を考えておいた方がいい」
ということです。
「売却」は最後の手段ではなく、選択肢の一つ
住宅ローンの返済が厳しくなってから、
「どうしよう」
と考えるのではなく、
まだ返済できている段階で、
「借換えをしたらどうなるのか」
「繰上返済をしたらどうなるのか」
「今売却したらどのくらいになるのか」
を確認しておく。
これだけでも、かなり違います。
不動産は株式などと違って、売却するまでに時間がかかります。
売却価格の査定をして、
媒介契約を締結して、
購入者を探して、
契約をして、
住宅ローンを完済して、
引き渡す。
これだけの時間が必要です。
そのため、「本当に困ってから売る」のではなく、余裕がある段階で現在の資産価値を把握しておくことには意味があります。
金利が上がることは、本当に悪いことなのか?
ここは非常に難しいところです。
金利上昇は、住宅ローンを利用する側からすると負担増になります。
しかし、金利が上昇するということは、必ずしも経済にとって悪いことだけではありません。
賃金が上昇し、企業の利益が増え、物価と賃金が適度に上昇し、それに伴って金利も正常化していくのであれば、経済全体としては健全な循環につながる可能性があります。
一方で、
「物価だけが上がる」
「金利だけが上がる」
「賃金が追いつかない」
という状況になれば、住宅購入者にとっては厳しい環境になります。
日本銀行も2026年に金融政策を変更しており、2026年6月には金融市場調節方針の変更を公表しています。現在の金融政策も今後の住宅ローン金利を考えるうえで重要なポイントになります。
金利が下がるとしたら?
では、今後金利が上がるだけなのでしょうか。
当然、そうとは限りません。
景気が大きく悪化した場合や、世界的な金融危機などが発生すれば、金融政策が再び緩和方向へ向かい、金利が低下する可能性もあります。
過去にはリーマン・ショックなど、世界経済を大きく揺るがす出来事がありました。
コロナ禍もそうでした。
しかし、金利が下がるような大きな経済ショックが起きた場合、それは住宅ローン利用者にとって単純に「良いニュース」とは言えません。
金利が下がる一方で、
会社の業績悪化
給与・賞与の減少
失業リスク
不動産価格の下落
資産価値の低下
などが発生する可能性があるからです。
つまり、
「金利が下がれば良い」
という単純な話でもありません。
これからの住宅購入で大切なこと
これから住宅を購入する方には、
「今の金利で払えるか」だけではなく、「金利が上がっても払えるか」
という視点を持っていただきたいと思います。
例えば、
「月15万円なら払える」
ではなく、
「金利が上がって月18万円になっても生活できる」
「月20万円になった場合でも対応できる」
というところまで考えておく。
住宅ローンは35年という長い期間の契約です。
35年間、現在と同じ経済環境が続くとは限りません。
これから不動産を購入する方へ
私は、これから不動産を購入すること自体が悪いとは思っていません。
むしろ、住宅は「いつ買うのが正解なのか」を正確に予測することが難しい商品です。
金利が上がるかもしれない。
不動産価格が下がるかもしれない。
逆に、さらに価格が上がるかもしれない。
誰にも正確な未来は分かりません。
だからこそ、
「金利が上がっても無理なく返済できる価格なのか」
「将来売却することになっても売りやすい物件なのか」
「自分の収入が減った場合にも対応できるのか」
を考えて購入することが重要だと思います。
私たち不動産会社も、金利上昇を注視しています
2026年9月現在、住宅ローンを取り巻く環境は大きく変わり始めています。
フラット35でも、2026年9月の21~35年の最頻金利は3.46%となっています。
一方で、民間銀行では優遇金利によって1%前後の変動金利で借りられる商品もあります。
だからこそ、現在の金利だけを見るのではなく、
「この先、金利が上がったらどうなるのか」
まで考えておくことが重要です。
私自身も、金利のある世界を十分に経験してきた世代ではありません。
だからこそ、これから何が起こるのかを簡単に決めつけることはできません。
ただ、不動産を扱う者として、
「今まで低金利だったから、これからも低金利だろう」
という前提だけで住宅購入を考えることには、少し注意が必要だと感じています。
最後に
不動産価格も金利も、これからどうなるのかは誰にも分かりません。
だからこそ、
「金利が上がるから買わない」
「金利が低いうちに急いで買う」
という極端な判断ではなく、
「自分なら、どこまでの住宅ローンなら無理なく返済できるのか」
を考えることが大切です。
そして、すでに住宅ローンを組んでいる方も、
「まだ支払えているから大丈夫」
と考えるだけではなく、現在の借入残高、金利、返済額、物件の現在価値を一度確認してみることをおすすめします。
借換え、繰上返済、売却。
すぐに実行する必要はありません。
いざというときに選択できるよう、早めに自分の状況を知っておく。
これからの「金利のある世界」では、それが今まで以上に重要になってくるのではないでしょうか。
私たちも不動産会社として、物件価格だけではなく、住宅ローンや将来の売却まで含めて、お客様にできるだけ分かりやすい情報を提供していきたいと思います。


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